「Webエンジニアの定義が良く分からない」
と感じませんか?
単純に「Webエンジニア=Webプログラマー」というわけではありません。
一般的には「Web系企業に属するエンジニア」というニュアンスで使われます。
しかし、実は語られる文脈や人によってWebエンジニアの定義が変わってきます。
筆者はSIerとWeb系にそれぞれ7年以上在籍してきましたので
- Webエンジニアの定義
- Webエンジニアの仕事内容や年収
- Webエンジニアの将来性
- Webエンジニアに合う人・合わない人
- Webエンジニアのなり方
について深く・客観的に紹介していきます。
とくに「Web系は天国だ」「SIerは地獄だ」という噂を聞いたことがある方は絶対に一読してください。
年収が高いのはSIerですし、定年までのキャリアパスがあるのもSIerです。
逆にWeb系はまだキャリアパスが固まっていませんし、退職金がない企業が大半です。
この事実を知ったうえで本当に目指して大丈夫ですか?
このような事実の上で「Webエンジニアになるべきかどうか?」も解説します。
この記事はITエンジニアを目指す方には必ず役に立つ情報となるでしょう。
目次で流し読み
Webエンジニアとは開発対象が自社サービスを開発するエンジニアの意味合いが強い
「Webエンジニア」と聞くと、Webシステムを開発できるエンジニアと言う意味に感じますが、それだけではありません。
IT業界で使われるWebエンジニアとは「開発対象が自社サービスを開発するエンジニア」を指します。
自社サービスとは、自社事業として運営している事業に使われるWebシステムのことです。
有名所では、
- ECサイト:Amazonや楽天
- Webサービス:スーモやメルカリ
- クチコミサイト:食べログや価格.com
などがあげられます。
このような事業を自社で運用し、その開発に携わる人を「Webエンジニア」と一般的に呼ばれます。
例えWebシステムを開発していても他社システムを請負するSIerでは、
- システムエンジニア(SE)
- プログラマー(PG)
と呼びます。
エンジニアの種類には他にもSESや社内SEなど多くがあります。
用語が分からない方へ
SIerやSES、社内SEなど用語が分からない方は下記の記事をご覧ください。
何も知らずに職を選ぶと長く後悔することになります。あいまいにせず必ず理解することがおすすめです。
Web技術が得意なエンジニアである場合はWebプログラマーと名乗った方が誤解は少ないでしょう。
各エンジニアの呼び分けを下記にまとめましたのでご覧ください。(筆者の主観が入っていますので、明らかに間違いと感じたものはコメント欄にご指摘いただけると助かります)
ポイントはやはり「開発対象」となります。
エンジニアの種類 | 開発対象 | 雇用形態 | 説明(概要) |
---|---|---|---|
Webエンジニア | 自社サービス | 正社員・契約社員 | 自社事業で売上を生むWebシステムの開発・運用 |
SE(システムエンジニア) | 他社システム | 正社員・契約社員 | 請負(お客様のシステム開発を請け負って)開発 |
社内SE | 自社内システム | 正社員・契約社員 | 自社内で事業を支援するシステムの企画・開発・運用 |
SES | 他社システム | 正社員・契約社員 | お客様のシステム開発を支援 |
IT派遣 | 他社システム | 派遣社員 | 派遣先のシステム開発作業 |
フリーランスエンジニア | 他社システム | 個人事業主 | お客様のシステム開発作業または請負開発 |
人気な社内SEは自社のシステム開発をしますがWebエンジニアと区別されることが多いようです。
その違いは開発対象が直接事業に貢献するかがポイントで、
- Webエンジニア:自社事業に直接貢献するWebサービス
- 社内SE:自社内で事業を支援するシステム
となります。
例えば、トヨタのように自動車を製造・販売する事業では、
- 生産管理システム
- 販売管理システム
など事業を支援するシステムが複数あります。
このような事業の支援システムに携わるエンジニアを社内SEと呼びます。
上記と毛色が違うのがSESとIT派遣です。
SESとIT派遣の両者は、どちらも他社システムの開発を行います。
同じ様に見えますが契約形態が異なります。
詳しくは「SESとは?派遣や請負との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説!」をご覧ください。
-
-
SESとは?派遣や請負との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説!
SEについて調べると「SES」という単語を見たことはありませんか? SESは2007年〜2008年あたりに需要が伸びた契 ...
最後にフリーランスエンジニアは、個人レベルで開発を請け負います。
企業に常駐することもあれば、自宅開発でシステムを構築することもあります。
ここで「あれ?フリーランスの人もWebエンジニアって名乗っているよ?」と気になった方がいるのではないでしょうか。
「Webエンジニア」の使われ方は文脈によって違う
この記事では「SE、社内SE、Webエンジニア、IT派遣、フリーランスエンジニア」という粒度でWebエンジニアの定義を説明してきました。
一方でWebエンジニアの厳格な定義がないため、文脈や人の解釈によってWebエンジニアの定義が違ってきます。
IT派遣やSESの方でも、クライアントのWebサービスを開発しているケースは「Webエンジニア」と同等の仕事をしていることになります。
そのためIT派遣やSESのご本人からすればWebエンジニアと解釈できるため、本記事での定義とはニュアンスが異なってくるでしょう。
文脈や人の解釈に合わせてWebエンジニアを捉えていきましょう。
WebエンジニアとWebプログラマーの違い
一番良く聞かれる「WebエンジニアとWebプログラマーの違い」をここで解説します。
Webエンジニアとは、自社事業で売上を生むWebシステムの開発・運用をするエンジニアです。
一方でWebプログラマーは単にWebシステムを開発するプログラマーです。
もし、「Webの開発をしている」という点だけを伝えたい場合はWebプログラマーと使った方が正しいでしょう。
自社事業のWebサービスを開発・運用していると幅広い意味を伝える場合はWebエンジニアと使いましょう。
では、具体的にWebエンジニアの仕事内容はどのようなものがあるでしょうか。
Webエンジニアの特徴まとめ
- 開発対象が自社サービスを開発するエンジニア
- 他のエンジニアとの明確な違いは開発対象にある
Webエンジニアの仕事内容は自社サービスの開発
Webエンジニアの仕事内容は自社サービスの開発です。
自社事業の開発ですから、サービスを大きくするために多くの施策を打ち出します。
それを情報技術で実現する役割がWebエンジニアの仕事です。
小さな企業では、多くの部署から依頼が来ます。
例えば、
- 営業から「クライアントの提携数を増やすために機能を追加したい」
- マーケッターから「Web広告のトラッキングをしたい」
- カスタマーサポートから「電話番号から顧客情報を検索したい」
などです。
Webエンジニアはどの会社でも人材不足ですので全ての要望を受けることはできません。
要望を一覧にまとめ、事業方針や計画に合わせて影響度が大きく工数が少ないものから対応していきます。
このような判断ができるためには、
- 各部署の仕事内容の理解
- 事業方針・計画などの自社事業の理解
- システムの全体像を理解しつつ、効率的な設計・開発力
が必要となり、これらができる人は昇進しやすく年収も600万円〜1,000万円となるでしょう。(もちろん利益が大きく出ている事業が前提です)
プログラミングスキルはもちろん、事業目線や部門間の調整なども求められるため人によっては「SIerの方が良い」という人がいます。
実際、SIerからWebエンジニアに転職した方の中にはSIerに戻る人もいます。
このようなWebエンジニアのメリット・デメリットについては後述します。
そして、Webサービスの開発は非常に神経を使う作業です。
なにしろ、大きなサービスだと何万~何百万という人が利用しているケースもあり、障害(バグ)を出したときの影響力は計り知れません。
Webエンジニアは単にプログラミングができるだけでは活躍できないことが分かります。
そのため、WebエンジニアとWebプログラマの表現の差は実に大きいことかがご理解いただけるのではないでしょうか。
プログラミング言語はRails・PHPのスクリプト言語が主流
現在、Webエンジニアが用いる言語はRuby(Rails)・PHPのスクリプト言語が主流になっています。
大きなシステムになるとJavaも利用されています。
世界のトレンドではPythonも多く使われていますが、日本ではまだまだ少ないです。
なぜ、RubyやPHPなどのスクリプト言語が使われているかというとアジャイルなどの開発手法と相性がよいためです。
アジャイルについては次で説明します。
Webエンジニアの開発はアジャイル開発が一般的。SIerと比べると属人的
「アジャイル開発」は、1週間~2週間を1セット(スクラムではスプリントと呼びます)にして機能をどんどん開発してリリースしていく手法です。
通常のシステムが「完成品」として世に出されるのに対して、アジャイルは1セットで実現できる必要最低限の機能を作り、リリースします。
そのため、アジャイル開発はリリースまでの期間が極端に短くなるというメリットがあります。
SIerで一般的に使われるウォーターフォールの開発手法では、リリースまで数ヶ月〜数年という期間を要します。
- アジャイル:1週間~2週間でリリース
- ウォーターフォル:数ヶ月〜数年でリリース
アジャイルのリリースの速さにはドキュメント量が非常に少ないという特徴があります。
ドキュメントを作るというのは開発と同じくらい時間がかかりますので、とにかく動くシステムを作ってしまうことに特化した手法といえるでしょう。
設計書・テスト計画書などなく、メンバーの裁量で進めていくため、個人のスキルに依存する部分が大きく、属人的な開発手法ともいえます。
1つのチームは2名〜6名が一般的
Webエンジニアでは2名〜6名のチームで開発するのが一般的です。
業界には「ピザ2枚の法則」という法則が有名で、ピザ2枚でお腹がいっぱいになれる人数以下でないと意思疎通しづらくなるため6名以下が通例となっています。
Web開発のチームで求められるのは柔軟性と機動性です。
人が複数人集まるとかならず
「これは◯◯さんの担当のはずだった」
「◯◯さんが☓☓だと言っていた」
というような問題が起こります。
しかし、良いチームはお互いをフォローしあい、高め合うことができるものです。
とくに、アジャイルのような個人の裁量に任せることが多い開発では、担当がはっきりしない部分がでてきます。
これを細かな話し合いで潰しておく、責任がはっきりしないグレーゾーンな作業があれば気づいた人がやっておく。
こういうチームは失敗しにくいのです。
Webエンジニアの働き方まとめ
- プログラミングスキルはもちろん、事業目線や部門間の調整なども求められる
- プログラミング言語はRails・PHPのスクリプト言語が主流
- Webエンジニアの開発はアジャイル開発が一般的
- 1つのチームは2名〜6名が一般的
一日の仕事の流れ
Webエンジニアの一日の仕事の流れを見ていきましょう。
出社
出社したらGitログのチェックやエラーログのチェックをします。
他にもチャットワークやメールなどをチェックしたのち、一日を計画を立てます。
朝会
プロジェクトやチームで集まって15分〜30分程度のミーティングを行います。
昨日の作業内容や課題、今日やることを共有します。
開発
自分のやるべきことが明確になったら、開発に取り掛かります。
開発内容によっては各部門の調整が必要となるため相談・合意のための打ち合わせもします。
打ち合わせ
全社ミーティングや事業状況の共有、部門横断の取り組みごとなどで打ち合わせがあるため比較的多いです。
余談ですが、このミーティングが前向きで建設的であるほど良い会社である傾向が多いと感じます。
残業
社外のシステムであれば契約で約束した納期があり、疲弊してでも残業しますが、Webエンジニアの場合は残業はそこまでありません。
自社サービスのため融通が効き、無理な残業をしないためです。
自分の裁量で残業ができます。
Webエンジニアの一日の流れはこういう感じです。
次に、Webエンジニアに求められる能力を見ていきましょう。
Webエンジニアに求められる能力は4つ
Webエンジニアに求められる能力は主に4つあります。
- 技術力(スキル)
- 事業目線
- 向上心
- コミュニケーション力
詳しく見ていきましょう。
能力1:技術力(スキル)が一人前にあるのは当たり前!
Webエンジニアにとって開発力があるのは当たり前です。
それに加え、要件定義・設計・テストのプログラミング以外のエンジニアリング力も必要です。
そのため原則、未経験からWebエンジニアになることはできません。
就職に強いプログラミングスクールに通ったり、未経験でもOKのSIerから下積みをすることが必要となります。
未経験でスタートするのであれば、SIerの方がおすすめです。
SIerは中堅以上の企業であれば未経験でも育成カリキュラムが用意されています。
そこで基本的な開発能力や考え方などを身につけたほうがキャリアアップのためにも有効です。
能力2:事業目線は重要!開発の優先順位決めや提案力のあるエンジニアが評価されやすい
Webエンジニアは開発だけをしているだけでは「良いエンジニア」とは呼ばれません。
どうすればサービスが軌道に乗るのか、収益を上げられるサービスになるのかを常に考える必要があります。
そのため、開発の優先順位決めや提案力のあるエンジニアは評価されやすい傾向にあります。
より事業者目線であることが求められるという意味では、ほかのエンジニアよりも難易度が高いといえるでしょう。
ちなみに事業目線で提案するエンジニアは非常に少ない傾向です。
10人いたら3人程度でしょう。
「事業に興味がないなぁ・・・」「売上を上げるためのアイデアを考えるのは苦手。」と感じる人はSIerを選びましょう。
Web系では20代は技術力が付けば評価されるでしょうが、30代を超えると事業に対し受け身のエンジニアは評価されない可能性があるためです。
筆者はこのあたりで苦労しました。
SIerからWeb系に転職した振り返りを「SIerからWEB系に転職して5年経ったので比較してみた」で生々しく紹介していますので、Web系に興味がある方はチェックしてください。
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-
SIerからWEB系に転職して5年経ったので比較してみた
「WEB系はSIerと比べて本当にいいの?」「WEB系への転職でうまくいくかな?」 このような疑問をSEの人が転職を検討 ...
能力3:IT技術と事業に対する絶え間ない向上心
これはエンジニア全般にも言えることですが、IT技術と事業に対する絶え間ない向上心が必要不可欠です。
IT技術、とくにWebの世界は技術の進歩が非常に速いです。
10年単位でトレンドが変わってしまうことも珍しくありません。
そのため、常に新しい技術にアンテナを張り、自分に取り込んでいく向上心と好奇心が求められます。
毎日、技術系の記事を読み、「あ、これ試してみよ」と手を動かせる方が一線で活躍します。
技術に興味がない人がWeb系のエンジニアになるとついていけずに苦労します。
能力4:複数部署に影響のあるリリースをスムーズに取りまとめるコミュニケーション力
大きなWebサービスになると、さまざまな機能が複雑に絡み合い、少しの機能修正や機能追加でも思わぬところで影響が出てしまうことが少なくありません。
そこで影響が大きそうなリリースでは複数部署と連携をとり、スムーズに進行する必要があります。
これを取りまとめるコミュニケーション力はWebエンジニアには必要不可欠といえるでしょう。
このようにWebエンジニアには複合的な能力が求められますが、果たして年収はどのくらいが相場でしょうか。
Webエンジニアに求められる4つの能力
- 一人前の技術力(スキル)
- 開発の優先順位決めや提案力
- IT技術と事業に対する絶え間ない向上心
- 複数部署に影響のあるリリースをスムーズに取りまとめるコミュニケーション力
Webエンジニアの年収はSIerより100万円低い傾向
Webエンジニアの年収はSIerよりも100万円ほど低い傾向にあります。
(詳しくは「WEB系企業の年収はSIerより100万円低い傾向|IT業界の歩き方」をご覧ください。)
求められるスキルは非常に高いのに年収が低いのはどういうことかというと、Web系企業で十分な利益を出しているのは一部しかないという点です。
赤字もしくはプラスマイナスゼロも少なくありません。
仮に利益が出ていても、Web系では流行り廃りが早く、一時的にブームになっても数年後にはユーザーが離れてしまうということもあります。
つまり、Web系は事業環境の変化が激しく売上が安定しないのです。
あのクックパッドでさえも2019年1~6月期の営業利益が7割減、純利益は5割減というニュースが出ました。
参考:クックパッド、1〜6月期は営業利益7割減。国内利用者「3年間で1000万人減」の正念場 | BUSINESS INSIDER JAPAN
あれだけの認知度とユーザーを誇るサービスでさえ、危機に瀕することがあるのです。
常に成長を続けていくWebサービスを作るのがいかに難しいかが分ります。
一方で、Web系以外のエンジニア(SE、社内SE、SES、IT派遣、フリーランスなど)は、1ヶ月あたりの工数でお金を請求するビジネスモデルになっています。
サービスの成功、失敗に関わらず売上が発生するため安定性は非常に高く、利益が出やすいです。
つまりビジネスモデルでみたときにWeb系は非常にもろく、逆にSIerは堅牢であると言えます。
そうなるとWeb系の将来性が気になってくるのではないでしょうか。
Webエンジニアの将来性はある!ただし、保守的な人にはおすすめできない
結論からお伝えするとWebエンジニアは業界的にも将来性の高い職業です。
ただし、保守的な人にはおすすめできません。
世の中では、こうしている間にもたくさんのサービスが開発・リリースされています。
そのため、Webエンジニアの需要は高いといえますし、この先なくなることも考えられません。
実際、企業ではインターン制度や高額な新卒年収を提示して、優秀な学生の確保に躍起になっています。
一方で、まだ業界が若く、定年までのキャリアパスが確立していないという側面もあります。
サービスが当たれば大きいですが、鳴かず飛ばず利益が上がらない企業では年収が低いWebエンジニアも少なくありません。
これはさきほどのSEとの年収比較からもわかると思います。
さらにいえば、退職金制度を用意している企業も少ないので、将来まで安定して働きにくいという側面があります。
このように、Webエンジニアは安定な将来・キャリアを求める保守的な人には向かないでしょう。
反対に、常に攻めたい人、今を楽しみたい人はWebエンジニアに向いています。
一方で、大手のSIerであればキャリアパスがある程度整っています。
退職金もあり、定年退職している人もたくさんいます。
さらには年配が後輩を指導する文化もあります。
プログラミングは若手のほうが有利ですが、仕事の仕方など年配の方に教わることは多くあります。
SIerというとIT系で革新的なイメージを持たれる方も多いですが良い点も多くあります。
変な先入観を持たないほうが良いでしょう。
ただSIerというと「大変!地獄!」みたいな話をよく聞きますが、実際のところどうなのでしょうか。
「SIerは行くなと言うフリーランスが多い」がSIerは本当に地獄なのか?
フリーランスの中には「SIerはやめておくべき」ということを言う人もいます。
果たして、SIerは本当に大変なのでしょうか。
メリット・デメリットはどうなのか考察してみましょう。
SIerのデメリット
SIerのデメリットは、
- 労働集約型の働き方となり働く場所・時間の制約を受けやすい
- 最先端の技術を適用しづらい
という2点が挙げられます。
1つずつ見ていきましょう。
労働集約型の働き方となり働く場所・時間の制約を受けやすい
SIerが開発するシステムは小規模なものから大規模なものまでさまざまですが、クライアントの都合で開発場所が変わることが少なくありません。
企業向けシステム開発は、その企業の機密情報を取り扱うことが多く、その情報を社外に持ち出すことができないという側面があります。
そのため、客先常駐で開発する必要が出てくるのです。
客先常駐になれば、自宅から遠い勤務地になってしまう可能性があります。
さらに、基本的に就業時間は客先のルールに従うことになりますので、普段は10時からのフレックスだったのに、客先で8時半始業なんてケースも出てきます。
もちろん、大手の中には高度なセキュリティ体制を敷いていて、自社開発が可能な企業もあります。
そういう企業であっても、案件にあっては客先常駐の可能性もまったくないわけではありません。
最先端の技術を適用しづらい
SIerでは最先端技術を適用しづらい傾向が強いです。
構築するシステムは、問題なく動作する確実性が求められるだけでなく、納品後もメンテナンスを続けられる持続性も求められます。
また、スケジュール通りに開発を進行しないといけません。
スケジュールが遅延すれば、その分の費用はSIerが負担しなくてはいけないためです。
こういった事情から、どうしても最新技術を適用しづらいという面があります。
最新技術は、どこまで世に普及するか不透明なため、将来に渡って技術開発がされるかわかりません。
さらに、最新技術だと技術的な開発資料が圧倒的に少ないのもあります。
開発で問題が起きたときにネット、書籍で情報が得られるかは開発をスムーズに進めるうえで大きな要因になります。
私も経験がありますが最新技術だと英語のドキュメントしかなく、稀な不具合が起きた場合は非常に工数がかかります。
このような件を対処するためにSIerでは必ず問い合わせられるようなサポート体制を組むため、最新技術が適用できなくなります。
SIerの2つのデメリット
- 労働集約型の働き方となり働く場所・時間の制約を受けやすい
- 最先端の技術を適用しづらい
SIerのメリット
SIerのメリットは以下の2点が挙げられます。
- プロジェクトマネジメント力がつき再現性のある開発力が付く
- 50才・60才のキャリアパスがある
1つずつ見ていきましょう。
プロジェクトマネジメント力がつき再現性のある開発力が付く
SIerの開発はWeb開発よりも体系化されておりノウハウも整備されています。
それは、どんなメンバーが入ってもスケジュール通りに開発するためのノウハウです。
SIerはより確実にシステムを納品するためにさまざまな工夫をし、再現性の高い開発手法を保持・改善しているのです。
SIerで働くとマネジメント力が身につくだけでなく、メンバーの力量に左右されにくい開発力がつきます。
これは転職するときには強力な武器になるでしょう。
50才・60才のキャリアパスがある
IT業界は歴史も浅く比較的若い年代が活躍していますが、SIerなら50才、60才にも活躍の場があります。
歴史の浅いIT業界においてSI関連企業は黎明期から存在しているため、長く活躍できるキャリアパスが整備されています。
なぜ、SIerはそうなのかというと、それだけ仕事の役割分担が進んでいる点が挙げられます。
開発フェーズが明確になっており、それに応じて求められるスキルや能力もはっきりしているという業界の特性もあります。
大規模なプロジェクトを進めるマネジメント力があれば、50才以上でも活躍するのは容易といえるでしょう。
SIerの2つのメリット
- プロジェクトマネジメント力がつき再現性のある開発力が付く
- 大規模なプロジェクトを進めるマネジメント力があれば、50才・60才にも活躍の場がある
「Web系最高」は要注意!価値観によって違う。モチベーションの搾取にも気をつけよう
世の中には「Web系最高」「Web系バンザイ」「SIerは地獄」というブログが多いです。
この手の情報には注意しましょう。
すべての人にとってWeb系が合うとは限らないからです。
SEにやりがいを聞くと「お客様と最高のシステムを作るのが楽しい」という回答もあります。
やりがいは自分で見つける価値観であり、影響されるものではありません。
確かにWeb系はキラキラしており、自由な社風とワクワクするような企画があると魅力的に写ります。
しかし、実際に働いてみると待遇が伴っていないケースがあるので注意です。
社員のモチベーションを上げるだけ上げて、モチベーションを搾取する企業もあります。
耳あたりの良い言葉ばかり並べて安い給料と長時間労働を強いる企業、いわゆるブラック企業です。
目先の価値観に惑わされず、40代・50代を迎えたときにどんな事や状態が達成していると良いか考えてみましょう。
一昔、クックパッドはWeb系の象徴的な企業でしたが現在では営業利益が70%減です。
参考:クックパッド、1〜6月期は営業利益7割減。国内利用者「3年間で1000万人減」の正念場 | BUSINESS INSIDER JAPAN
ボーナスカットされ、昇給が見込めなくても働きたいですか?
価値観の本質を見ずに、イケてる雰囲気で職場選びするのは非常に危険です。
Web系の企業はどこもイケてる感を出すように工夫しているものなのです。
では、新卒でこれから会社を選ぶ人はWeb系・SIerのどちらを選ぶべきでしょうか。
新卒はWeb系・SIerどちらがおすすめ?
結論からお伝えすると事業がやりたいならWeb系がおすすめです。
Webサービスを軌道に乗せて収益化する仕事はとても刺激的でしょう。
反対に、事業に興味がなくモノづくりに興味があるかたはSIerも検討してみましょう。
事業に興味がないのにWeb系に行ってしまうと悲惨です。
評価も上がらなければ給料も上がらないので、一生開発人員として働くことになります。
SIerでは教育制度もあり、体系立ててモノづくりを覚えられます。一方でWeb系は場当たり的な対応が多く、体系立てたノウハウは得られないでしょう。
そのためSIerからWeb系は転職できますが、その逆は難しいケースが多いです。
気になる方は筆者がSIerとWeb系をそれぞれ7年以上経験から解説した記事「【要注意】WEB系からSIerの転職はきつい!WEBエンジニアとSEの仕事の違い」をご覧ください。
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【要注意】WEB系からSIerの転職はきつい!WEBエンジニアとSEの仕事の違い
クックパッドのような事業会社でWEBエンジニアをしている方は、 SEに転職できる? 苦労する点はない? と考えたことはな ...
最後にどのようにすればWebエンジニアになれるか紹介いたします。
新卒はWeb系かSIerどちらに行くべき?
- 事業がやりたいならWeb系
- モノ作りに興味があるならSIer
Webエンジニアになりたい方は開発力をつけよう
Webエンジニアになりたいのであれば、開発力を身につける必要があります。
では、開発力はどうすれば身につくのでしょうか。
結論からお伝えすると、多くの人におすすめなのはプログラミングスクールに通うことです。
社会人から転職ならプログラミングスクールを受講すべき
社会人になってから転職するのであればプログラミングスクールを受講して、スキルを身に着けましょう。
いまは未経験でもIT系に転職する人が増えています。
もちろん、まったくの素人のまま転職に成功するケースは稀ですが、スクールでスキルを身につけることで比較的簡単に転職することが可能です。
受講スクールは目的から選びましょう。
「Webエンジニアに転職する」が目的の方が多いと思いますので後述します「転職保証付き」のスクールを選ぶことが必須です。
おすすめのスクールは「転職に強いプログラミングスクールはキャリアカウンセリング力と転職保証で選べ!」で紹介していますので、失敗せずWebエンジニアになりたい方はチェックしてください。
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転職に強いプログラミングスクールはキャリアカウンセリング力と転職保証で選べ!
プログラミングスクールが多すぎて 「どこえらべばいいの?」 と悩んでいませんか? スクールは100校を超えていると思うの ...
学生なら独学またはプログラミングスクールでスキルを身につけよう
学生なら独学、またはプログラミングスクールでスキルを身につけておきましょう。
新卒採用であれば、まったくの未経験からでも入社は可能です。
ある程度の規模の会社であれば新人研修が用意されています。
しかし、先にスキルを習得しておけば、研修をスムーズに進めることができます。
また、自分の興味のある分野・部署に配属されたいのであれば、事前に学習しておくことで優先的に配属されます。
どこの部署も開発力がある新人がほしいからです。
Webエンジニアになるためにどうすればいいか?
- 社会人からWebエンジニアに転職したいならプログラミングスクールを受講する
- 学生からWebエンジニアになりたいなら独学かプログラミングスクールに通う
コラム:独学するならプログラミングを相談できる仲間が必須
独学でプログラミングを学ぶことは可能なのか?という質問をよく受けますが、独学でプログラミングを習得するにはかなりのセンスと忍耐、さらに相談できる仲間が必須です。
なぜなら、初心者がプログラミングを学ぼうとすれば必ずバグが出ます。
しかし、初心者はどこがバグなのかわからないのです。
それどころか、環境を構築するだけでも挫折する人がいるくらいです。
そういうときに、相談できる経験者がいれば大きな助けとなるでしょう。
プロのエンジニアでもバグは出します。
問題はそのバグをどのように発見し、修正するのか。
どこに問題があるのかを論理的に思考するにはある程度の経験が必要です。
そういった面で、忍耐力とセンスがないと個人だけではモチベーションが続かずに挫折する可能性は非常に高いのです。
もし、個人でプログラミングを学ぶ必要性がとくにないのであれば、プログラミングスクールに通ったほうがスキルを習得する可能性は格段に高くなるでしょう。
プログラミングスクール選びは「就職保証付き」がおすすめ
プログラミングスクールを選ぶときには「転職保証付き」のスクールがおすすめです。
「転職保証」とは「スクール卒業後に転職できなければ、受講料を全額返金します」という制度のことです。
転職・就職できなくても返金されます。
さらに保証があることで勉強にも集中できます。
保証があることで「ホントに就職できるか不安」と勉強が手につかなくなることも少ないでしょう。
筆者が実際にインタビューして「おすすめ」と言えるスクールはDMM WEBCAMP COMMITとテックキャンプ エンジニア転職です。
20代ならDMMWEBCAMP COMMITがおすすめ
20代ならDMMWEBCAMPがおすすめです。
20代限定のプログラミングスクールで、在学中は通い放題、質問し放題というのが特徴のスクールです。
3ヶ月という受講期間で1人前のスキルと知識を身につけることができます。
教室は渋谷と難波の2校ですが、近所に住んでいない人にはオンラインコースも用意されています。
誰でも利用できるのも魅力でしょう。
転職成功率は98%を誇り、さらにその90%は完全未経験から転職に成功しています。
キャリアカウンセリングも充実しており、専属アドバイザーが転職後のキャリアパスや転職活動をサポートしてくれるのも心強いです。
DMM WEBCAMP COMMIT/PRO
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学べるスキル |
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料金 | 20,204/月〜(税別) |
オンライン教室 | ◯:2020年4月よりオンライン完全対応 |
受講形態 | セミナー形式&自己学習、オンライン講座・オンライン相談 |
スクールの場所 | 東京(渋谷区、新宿区)、大阪(難波フロントビル校、難波御堂筋センタービル校) |
就職のサポート |
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30代以上ならテックキャンプ エンジニア転職がおすすめ
30代以上であればテックキャンプ エンジニア転職がおすすめです。
30代では未経験からの転職は遅いと考える人もいるでしょうが、未経験からエンジニアになって活躍している人はいます。
テックキャンプ エンジニア転職は未経験からの転職に強く、99%が未経験からの転職となっています。
30代以上はその中でも30%もいるのは安心材料ではないでしょうか。
テックキャンプ エンジニア転職の特徴は徹底的に効率化されたカリキュラムです。
通常、エンジニアになるためには1,000時間が必要といわれていますが、テックキャンプ エンジニア転職では600時間で習得します。
また、短期集中、夜間・休日の受講でライフスタイルに合わせることができるのも嬉しいポイントでしょう。
卒業後は転職サポートが専属で付きますので、自信を持って転職活動を行えますよ。
テックキャンプ エンジニア転職
学べるスキル |
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料金 | 29,000円/月〜 |
オンライン教室 | ○ |
受講形態 | 自己学習&オンライン(質問はいつでも可) |
スクールの場所 |
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就職のサポート |
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年代別「転職保証付き」のプログラミングスクールまとめ
- 20代ならDMMWEBCAMP COMMIT
- 30代以上ならテックキャンプ エンジニア転職
コラム:Webエンジニアに資格は不要!実力主義!
転職をしようとすると、まずは資格を取ろうとする人がいますが、それは間違いです。
Webエンジニアは実力主義の世界ですので、資格よりもスキルや知識があるほうが受けはいいです。
資格の有無は同じ条件の人材がいるときに初めて見られる程度のものだと考えておきましょう。
資格を取る時間があるなら、その分技術の習得に時間を使ったほうが転職に成功する確率は高くなります。
実際、現役のエンジニアでも現場で働きだしてから必要に応じて取得する人のほうが圧倒的に多いです。
ただ「知見を深めるためにどうしても資格を取りたい!」という方もいると思います。
その場合は迷わず国家資格である「基本技術者情報試験」を取得しましょう。
詳しくは「SE転職で面接官もおすすめの資格を紹介!転職を有利にする資格とは?」をご覧ください。
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SE転職で面接官もおすすめの資格を紹介!転職を有利にする資格とは?
転職を有利にするために 「SEはどんな資格が就職や転職に強い?」 「かんたんに取得できて実務で使える資格はない?」 と考 ...
まとめ
今回はWebエンジニアの特徴や仕事内容、SIerとの違いを見てきました。
Web系は華やかなイメージがありますが、収益性がネックになっている企業が多く、高額の年収を得ているWebエンジニアはごく一部です。
一方で、SIerはビジネスモデルがしっかりしているので年収という面ではSIerに軍配が上がります。
しかし、大切なのは自分に合う、興味のある仕事に就くことです。
両者のメリット・デメリットをしっかり比較して就職・転職に役立ててくださいね。