退職代行を利用してみたいけど「本当に利用してよいのだろうか?」と不安になりませんか?
実際、退職代行を検討している人からは
「失敗するケースはあるの?」
「会社側はどんな風に感じるの?」
「違法じゃないの?本当にデメリットはないの?」
という質問をよく受けます。
口コミや事例も少なく不安な気持ちがよく伝わってきます。
そこで今回は10年以上に渡り上場企業の人事部を経験した筆者が退職代行サービスの失敗やデメリットについて紹介していきます。
人事のプロとして考えうるすべての失敗ケースや嫌がらせを紹介しています。
退職代行の利用を検討している方は最後までしっかりとご確認ください。
目次で流し読み
人事担当が答える!退職代行の退職はあり?なし?
退職代行を使うことで、退職することは可能です。
理由としては人事側は退職届または退職願の提出と、本人の意思が確認できれば退職を受理することができるためです。
特に退職届は一方的に退職の意思表示を行う書面なので、退職届を提出して2週間が無事経過すればそれで退職は成立します。
憲法22条の「職業選択の自由」として誰にでもある権利です。
そのため社員が退職をするにあたっては経営者の同意は必要ありません。
もしも退職代行サービスで確実に退職したい場合は、退職届を持っていってもらって退職の意思を伝えればそれで問題ないといえます。
ちなみに人事担当の印象は?
人事担当として心情的な部分としては、退職代行サービスは人事担当者的には「なし」だと考えています。
退職とは自分の意志と責任で会社に伝えるものであって、代行は本来は必要のないことです。
会社に辞めると一言伝えれば終わる話をなぜ第三者を入れて行う必要があるのかなと思ってしまいます。
自分自身の人生において大切な退職という意思決定事項を第三者に任せるなど言語道断であると普通の会社の人事は考えますね。
入社時に無理やり入社させたのではなくほとんどの就職希望者が「本人が求職情報を見て、会社に面接を依頼して、面接に合格した」から内定が出たのではないですか。
無理やり入社させたわけではなく入社の意思表示をしたから入社したはずです。
ブラック企業のように会社を辞めさせてもらえないケースの場合は仕方ありませんが、そうでない場合は極力自分の力で退職を伝えることが望ましいといえますね。
「パワハラ上司で言い出しても聞いてもらえない」という話はよくあります。
そういった場合は意外と人事や労務に伝えると早く進むケースが多いです。
会社としても揉めたくありませんし、客観的に対応してもらえます。
退職代行は違法ではない?
退職代行は違法ではない可能性があります。
理由としては、退職の意思表示を伝えること自体は第三者でも問題ないためです。
若い新卒の子であれば本人が退職を伝えづらくて両親が話し合いに出てくるパターンもあります。
人事としてほしいのは「自己都合で退職した証明」として退職届または退職願が欲しいというのが本音です。
退職届または退職願があれば後から「解雇された」など会社と社員の間で労働紛争になる可能性を消せる場合があるためです。
但し、会社の人事担当者と退職について揉めた場合は、退職の代行業者が交渉などを行えばいわゆる「非弁行為」となって違法行為となります。
退職を伝えてそのまま受理されれば退職代行業者だけでも問題ないですが、もしも会社ともめ事になった場合は弁護士以外は対処できません。
退職代行で失敗しそうなパターン3個
退職代行サービスを活用する上で失敗するパターンとしては退職代行サービスを企業人事が怒りをもって受けつかなった場合に、トラブルとなる可能性があります。
ほとんどの人事は、退職願または退職届さえ提出されれば怒りの矛を収めるとは推測されます。
失敗パターン1:本人以外と話し合いをするつもりはないと言われたパターン
会社との労働契約を結んでいる社員以外と、労働紛争などがあった場合以外では第三者と話をする義務は本来は、人事にはありません。
就業規則などでも、退職をする場合は、以下のようになっていませんか。
従業員は退職をしようとする場合は、少なくとも退職の日の2週間前までに社員本人が退職願を所属長に提出し、人事の承認または会社の承認を得ること
原則として本人が申し出を行うことを義務付けている会社が多いはずです。
失敗パターン2:有給消化などの交渉を迫られるパターン
有給休暇が残っている場合は消化するかどうかなどを決定しなくてはなりません。
そうした有給休暇の残数分の消化についてなどは原則として本人の申し出が必要です。
代理人では弁護士以外は対処できません。
失敗パターン3:無断欠勤による懲戒解雇を適用されるパターン
ほとんどの会社で3日以上の無断欠勤は懲戒解雇とすると規定しているはずです。
退職代行サービスを使用した当日に有給休暇を申請している場合は問題ありませんが、もしも何も届けることなく退職代行の担当者が会社と交渉する場合は無断欠勤にあたる可能性が高いです。
退職代行の担当者が交渉する日は前もって有給休暇を申請するようにしたほうが無難です。
会社から嫌がらせの傾向と対策
会社からの嫌がらせとして想定されるのは、退職後に絶対に必要になる書類を送りつけないなどの嫌がらせがあり得ます。
退職後に一番困るのは離職票がないことです。
失業保険がもらえません。
また、同業他社に転職する場合は人事同士で集まりがあった場合は情報が洩れる可能性もあります。
離職票を発行しない
離職票を発行しないというケースは実は多いです。
ブラックと呼ばれる企業は基本的に嫌がらせが得意なことが多いので、失業保険の受給などをできなくする可能性もあります。
退職事由が懲戒解雇の場合は失業保険の受給そのものが遅れてしまいますし、無断欠勤扱いで懲戒解雇扱いされると非常にまずいです。
依頼しても送付されない場合はハローワークの担当者に連絡を行うようにしてください。
会社から嫌がらせを受けて離職票が出なくてもハローワークに離職票の送付がされず困っていると伝えればハローワークで再発行することが可能です。
注意点として離職票は非常に発行手続きが面倒な書類なので、2週間程度は送られてこないことがよくあります。
行き違いにならないように注意してください。
私物を送らない
会社のロッカーなどに私物を残していると荷物をそのまま捨てられる可能性があります。
私物などは退職までの間にできる限り家に細かく持って帰るなどの対処をするようにしてください。
特に机やロッカーなどはいま働いている従業員のために用意されているもので退職する人のために会社が用意したものではありません。
源泉徴収票を送らない
源泉徴収票が送られないといった場合もあります。
源泉徴収票は基本的には、転職先の会社に提出したり確定申告で提出する必要があります。
ないと非常に困るものなので絶対に退職してから送付してもらえるようにしてください。
もし送付されない場合は、税務署に行ってください。
源泉徴収票の不交付の届出書を税務署に送付します。
源泉徴収票の不交付の届出書を送付することで、税務署の調査が入る可能性があるため強力なプレッシャーを与えらえる可能性があります。
狭い業界の場合はうわさが流れる可能性もある
同業同士で人事担当者交流会などが頻繁に行われています。
仮に同業他社とのつながりがなかったとしても、人事担当者同士で同じ地域の人事同士は仲が良い場合もあります。
「〇〇さん、あんな社員だったよ。退職代行使ったよ」と言われてしまうリスクも全くゼロではありません。
滅多にそんな個人情報が漏れることはありませんが人事担当者交流会などはお酒の入る席が多いです。
うっかり話してしまう人もいるかも知れません。
そうなれば転職先の人事部門の社員も「いい人だと思ったのにそんな不義理をする人だったのか」となってしまいかねません。
退職代行は弁護士系のサービスがいい?
退職代行は弁護士系のサービスを活用したほうがよいといえます。
理由としては、退職の意思を伝えてスムーズに退職を了承されなかった場合は、労働トラブルに発展する可能性があるためです。
そうなると弁護士以外では会社の経営者や人事と渡り合うことはできません。
またブラック企業のような会社の人事なども「法律には勝てない」ということはよく理解しています。
弁護士がバックについている会社の方が安心できます。
弁護士がいない専門サービスのデメリットは?
弁護士がいない専門サービスのデメリットとしては、法律的な問題に対処できない可能性が高いという点につきます。
ほとんどの会社で労働紛争にまで至ることは少ないとは思いますが、もしも会社から何らかの法的な対応を求められた場合、弁護士がいないと困ります。
理由としては会社側にはいわゆる「経営者側弁護士」と呼ばれる方たち顧問として在籍しています。
経営者側弁護士が出てくるような事態もそうそうないですが、もしも労働紛争に発展すると顧問弁護士などとやりとりすることになります。
そうなった場合に弁護士のいない専門サービスを活用しているとなかなか退職がうまくできない可能性があります。
会社側はこんな点に困る!配慮できるなら対応しよう
会社側が困る点としては、退職代行サービスを活用されてしまうと本人の意思確認ができない可能性があります。
退職願または退職届だけは提出するようにしてくださいね。
困る点1:退職願または退職届を書いて、記名押印して提出代行してもらおう
離職票を送らないといった嫌がらせなどがあるともいわれていますが、会社側としては退職願または退職届さえあればそこまで過剰に反応しないはずです。
一番会社が嫌がるのは退職届または退職願がない状態で退職に至った場合、「解雇された」と退職者が騒がれることがあるためです。
また、退職願か退職届がないと離職票発行の手続きが出来なくなる可能性があります。
逆にいえば退職願か退職届さえあれば会社側は納得する可能性があるということですね。
困る点2:上司と揉めても冷静になって、人事に話をする
もしも会社で直属の上司ともめ事になっても、人事に話がいっていないことが多く人事が知らないということもあり得ます。
勝手に現場が退職拒否を行ったというパターンです。
上司としては部下が退職すると指導能力やパワハラセクハラを疑われるため人事には知られたくないと考えます。
仮に直属の上司ともめ事になっていても人事まで話が来ればすんなり退職に至ることが多いです。
理由としては退職する社員と揉め事になって負けるのは会社だからです。
直属の上司が感情的になっていたとしても人事担当者は冷静に会社を守ることを第一に考えるため、上司に話をして埒が明かない場合は人事部の社員に直接相談するようにしてください。
人事部が組織として設置されている会社の場合は、現場の上司に人事権のような権限はほとんどありません。
最終的な決定などは人事の手の中にあることが多いので、直属の上司と揉めて嫌な思いをしたら人事に相談するようにしてください。
困る点3:退職日は給与の締め日にしてほしい
事務的な話ですが、退職日は給与の締め日にしてあげてください。
理由としては社会保険関係や給料の支払日で締め日以外に退職されると後処理がややこしくなるためです。
出来る限り給与の締め日に退職日を持ってくるようにしてください。
困る点4:健康保険証や社宅のカギは速やかに返してほしい
健康保険証や社員証は退職日以降は使用不可能です。
また、回収できないと喪失手続きといった業務が滞ってしまいますし、余計なお金がかかってしまいます。
できれば退職を決めて退職代行サービスを頼む場合は社員証や健康保険証、会社で使っていたハンコは返すようにしてください。
また、社宅などを利用していた場合はカギだけでも返すようにしてください。
特に社宅を使用していた場合、ガスの閉栓作業などは本人しかできない場合もあります。
出来ればそこは本人で行うようにしてくださいね。
まとめ
退職代行サービスは特に法律的な問題はありませんが、人事担当者としてはできれば本人が退職については伝えたほうがよいと思っています。
自分自身のこれからの人生に対する責任を取るという意味では、本人が申し出を行ったほうが良いといえます。
退職代行サービスの場合は弁護士がバックについているサービスを利用したほうが良いといえます。
弁護士がいないと労働紛争に発展した場合には、対応できません。
また、無断欠勤によって懲戒解雇扱いされてしまう可能性もあります。
代行サービスを使う場合にはできる限り自己防衛をして、活用する場合は弁護士のついているサービスを活用するようにしましょう。